君が教えてくれた事



「遅いね〜?私、ちょっと見てくるよ!」



リカが立ち上がって、ドアに向かった時、




「頼んでないから・・・。」



俺は初めてリカに、声をかけた。



振り向いたリカは、驚いた顔をしていた。




そしてそのまま、バックルームを飛び出した。





「ごめんね〜。気付かなくて!お腹すいたでしょ?何食べる?」



戻ってきたリカは、勢いよく俺の前にメニューを広げた。



何でリカは、俺の為にこんな事をしてくれるのか?



俺には、分からない。



でも、リカは今まで会った事のない様な子で、偽善者でもない。



それだけは分かった。




俺が鶏丼を指差すと、



「鶏丼?・・・唐揚げも食べる?」



リカはニッコリ笑って、そう言った。



リカの自然な笑顔につられて、俺も少し笑って頷いた。



誰かに対して笑うなんて、もう記憶にもないくらいだった。


リカは注文を打ち込むと、また走ってバックルームを出て行った。




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