君が教えてくれた事



予定日を1週間過ぎた6月14日の早朝。


遂にその時を迎えた。




隣で眠るリカが、激しい痛みで、俺を起こす。




「歩太・・・陣痛きたかも・・・。」



慌てて体を起こすと、リカは必死に痛みと戦っていた。



体を固くして、顔を歪め、苦しそうに声を漏らす。




「あっ・・・タクシー、
救急車?」



俺は軽くパニック状態。



何度も頭の中に、この日の行動を叩き込んでいたのに、実際はオドオドするだけ・・・。




「歩太、落ち着いてよ・・・すぐには産まれないから・・・

とりあえずタクシー呼んで、病院行こ」


こんな時でも、リカの方が冷静だった。



タクシーを待ってる間に、病院に向かう準備をする。




痛みが和らいだリカを抱きかかえながら、玄関に向かう。




リカを玄関に座らせて、マンションの上からタクシーが来ていないかを見下ろす。




もう俺は、廊下と玄関を行ったり来たりで・・・




そんな俺を見てリカは笑った。





.
< 206 / 260 >

この作品をシェア

pagetop