君が教えてくれた事
「お父さんも、入って下さい!!」
看護士さんに渡された、消毒済みの服に袖を通す。
恐怖にも似た緊張で、体中から汗が吹き出る。
分娩台に寝かされたリカの手を両手でしっかり握った。
「宝来さ〜ん、ゆ〜っくり呼吸して下さいね〜」
先生が優しく声をかけ、リカは一生懸命に首を縦に振る。
「まだいきまないで〜」
「ん゛ーーーっ」
「リカ、痛いな、痛いよな・・・がんばれ、がんばれ。」
俺の目み見て、“うん”と力なく頷く。
「はい、じゃあいきますよ〜大きく吸って〜」
すぅぅーーー
「吐いて〜・・・」
ふぅぅーーー
リカと同じ様に、俺も先生の言葉通りの行動をする。
「はいっいきんでっ!!」
「う゛ん゛ーーーっっっあ゛っ・・・いたーいっ・・・」
強く握ったリカの爪が俺の手に突き刺さる。
目の前のリカを見ていると、こんな痛みは全く感じない。
「うぅっっっ・・・はぁっはぁっはぁっ・・・・・・痛いっ・・・いたっ」
「がんばれ、リカ。」
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