君が教えてくれた事



「歩太、会いに行こう?」




リカは俺を見つめたまま言う。



「もう、いいんだ。別に謝って欲しいとも思ってない。」



今の幸せが俺の全てだから。


過去はもう、いらないんだ。




リカは涙をためて、握った手に力を入れた。




「今日・・・お父さんに電話したの・・・。」


「何で?・・・何でそんな事したの?」


「だって、歩太に手紙を読んで欲しかったから・・・
でも、歩太が傷つくかもしれないって思ったら、読んでって言えなかった。
だから、お父さんに聞きたかったの・・・。聞きたい事、たくさんあったのに・・・

・・・お父さんね、私が“歩太の妻です”って名乗ったら、それだけで、泣き出しちゃったの・・・。
何度も何度も、申し訳ないって・・・私に謝るの。」




リカがそこまでしてくれたなんて・・・



父親が今、俺の事をどう思っているとか、そんな事は本当にもうどうでもいいんだ。




でも、リカがしてくれた事が嬉しかった。




いつも、俺の事を心配してくれて、想ってくれている・・・


その気持ちが、嬉しかった。




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