君が教えてくれた事
「おつかれ。前半の子は、上がっていいよ。」
店長の言葉で、俺達はバックルームに戻った。
今日の前半上がりは、俺とリカ。そして、野上と沢村。
俺はすぐに更衣室に入って着替えを済ませた。
ズボンのポケットから携帯を取り出して、リカの名前を表示させた。
いつか、かけてくれるかな?
少しずつ膨らんでいく自分の気持ちを、俺は幸せに感じた。
携帯をポケットに戻して更衣室を出ると、リカも既に着替えを済ませていた。
俺がバックルームのドアに向かって歩きだすと、
「今日は、もう帰るよっ!おつかれ〜」
「リカ、ばいば〜い!」
リカは、沢村と野上に挨拶をした。
俺がドアに手をかけた時、
「おい、宝来。お前まだ分かってないの?」
野上の低い声が、俺を呼び止めた。
振り返ると、野上は俺とリカが手に持つ、携帯ショップの袋をじっと見ていた。
多分、一緒に買いに行った事に気付いたんだろう。
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