君が教えてくれた事



しばらくすると、俺は、リカの腕を掴んで歩き出した。



リカは何も言わずに、ただ俺に手を引かれるままに、俺の後ろをゆっくりとついて来る。







「・・・ここ。汚いけど。」




俺は、アパートの鍵を開けて、リカを部屋に入れた。



誰かを家に入れるなんて、もちろん初めての事だ。




「意外とキレイじゃん。」



部屋に入ったリカは、ぐるりと部屋を見渡して、入り口に立ち尽くしていた。



「座ったら?」



俺が声をかけると、リカはテーブルの前に、座った。



この部屋には、テレビもコンポもない。


もちろんゲームなんて物も。



リカは少し居心地悪そうに下を向いている。




「腹へらね〜?」



「うん。お腹すいた。」




そう答えたリカがやっと、少し笑ってくれた。



それだけの事。



それだけの事で、俺の気持ちはまた、穏やかになっていく。



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