君が教えてくれた事



店に入ると、既にリカは出勤していた。


「歩太!おはよう〜。」



いつもの様に笑顔で挨拶をしてくれる。



でも、俺は無言のままバックルームに入った。



野上がいたから・・・



俺がリカと親しくすると、野上が怒る。


そしたら、リカはまた、悲しい顔をするから・・・。






俺が更衣室で着替えをしていると、野上が入って来た。



「宝来・・・昨日は・・・悪かった。」



突然、謝られて思わず野上を見ると、気まずそうに横を向いていた。




「別に・・・いいよ。」


「昨日・・・リカちゃんに、殴られちゃったよ。」



野上は左の頬を撫でながら笑った。



リカが・・・殴った?


信じられなかった。


でも、野上の目は真剣だった。




「お前・・・リカちゃんの事・・・好きなのか?」




リカが好きか・・・?



「・・・あぁ・・・好きだよ。」



俺は初めて、リカへの想いを口にした。



もう、認めたかった。






「そっかぁ。俺もさ・・・好きなんだ。
でも、振られた。
俺は、リカちゃんには、似合わないよな・・・あんないい子。

今まで、悪かった。ごめん。」




「謝らなくていいよ。別にお前だけが悪いんじゃないし。原因は俺にある。分かってるから。」



リカに出逢ってから、俺は確実に変わり初めている。



こんな風に、会話をする事なんて、なかったのにな。





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