君が教えてくれた事



どこに向かっているかも分からないまま、俺はただリカの隣を自転車を押しながら歩いた。





しばらくすると、


「・・・ここって・・・?」




リカは見覚えのあるマンションの前で、足を止めた。




「自転車、ここに停めてね。」



わけが分からないまま言われた通りに自転車を停めると、リカは俺の手を引いて、マンションの中に入った。





3階の一番奥の部屋。



【上原】の表札。




「入って!」



リカはドアを開けると、先に俺を部屋に入れた。




リカの部屋がどんななのかなんて、見ている暇もなく、目に飛び込んできたのは、テーブルいっぱいに用意された料理。



「・・・リカ?」


「歩太、座って?」


驚きながらも、リカに言われるまま、俺はテーブルの前に座った。



「じゃ〜んっ!!」


テーブルの真ん中に置かれていた箱のふたを、リカが開けると、



生クリームの丸いケーキ。



〈あゆたくん
お誕生日おめでとう〉



チョコレートには、そう書かれていた。


嬉しくて、恥ずかしくて・・・


俺はごまかす様に笑ったんだ。



そうしないと、涙が出そうだったから・・・




リカは、背中を向けると、目をこすった。




・・・泣いてるの?



そう思ったけど、振り向いたリカは、いつもの笑顔だった。



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