君が教えてくれた事
俺が小学校に上がった頃、お母さんが突然言ったんだ。
「歩太はもう、お兄ちゃんだから、何でも1人で出来るわよね?」
って。
初め、その言葉の意味が分からなかった。
でもその日から、食卓に、俺のご飯が用意されなくなったんだ。
「後で持って行くから、部屋で待っていなさい。」
お母さんは、俺の目を見る事なくそう言った。
父親は、俺を見て、すぐに目を逸らした。
すごく悲しかった事を覚えている。
俺は、家族じゃないんだって・・・
学校から帰ると、部屋にいる事を命じられた。
テレビを見る事も、友達と遊ぶ事も、全て禁止だった。
夏休みにどこかへ連れて行ってくれる事もない。
ただ、おばちゃんの家に預けられるんだ。
でも、おばあちゃんの家にいる時は、すごく楽しかった。
おばあちゃんは、寝る前に、いろんなお話を聞かせてくれて、いろんな所に連れて行ってくれた。
もう帰りたくないって思った。
でも夏休みが終わる前に、両親が俺を迎えにきた。
その手に、おばあちゃんへのお土産をたくさん持って。
俺以外の家族は、みんなで旅行に行っていたんだ。
俺へのお土産は1つもなかった。
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