君が教えてくれた事
「死のうと思ったんだ・・・。」
俺がそう言った時、リカが俺の腕をキツく掴んだ。
その目は、とても怯えていた。
「死ねなかった。怖くなったんだ。情けないよな・・・?」
ビルの屋上や、踏み切りの線路。
死にたいのに、足が竦んで、一歩も踏み出せなかった・・・。
「情けなくなんかないよ・・・。その時の歩太に感謝だよ・・・。」
リカはそう言って、俺の体を小さな体で包んでくれた。
その体は、小刻みに震えていた。
俺はリカの体を離すと、Tシャツを脱いで、
背中を向けた。
消える事なく残っている、母親に付けられた、無数の傷跡。
リカは驚く様に息を吸うと、俺の背中にそっと触れた。
反射的に俺の体がビクッと跳ね上がった。
「・・・痛い?」
リカの方に顔を向けると、リカは心配そうに、俺の目を覗き込んだ。
「痛くないよ・・・。」
俺が答えると、リカは顔を歪めて、もう一度、俺の背中に触れた。
そして、ゆっくりと、その背中にキスをしてくれたんだ。
その感触が、全てを消してくれる様で・・・
すごく・・・
温かかった。
.