君が教えてくれた事



リカを自転車の後ろに乗せて、ゆっくりとこぐ。



リカはしっかりと俺の腰に腕を回して、楽しそうに鼻歌を歌っている。





『海賊』に着くとリカは、寂しそうな顔をして、俺を見上げた。



「キスは?」



そう聞いてくる。




まっすぐ俺を見つめる大きな目に、吸い込まれそうになる。


ドキドキして、抱きしめたくて、離したくなくなる。




「ばかっ!早く行けよ」



動揺を隠すようにそう言うと、リカは拗ねた様な顔をした。


その顔がまた、かわいくて、たまらない感情が生まれてくるんだ。





リカを送った後、俺は自分のアパートに戻った。



一人きりになると、昨夜の事、さっきまでの事が嘘なんじゃないかって、急に不安になった。




こんな俺を、リカは受け入れてくれたんだ・・・



一緒にいたいって・・・



そう言ってくれたんだ・・・。




抱きしめてくれたリカの温もりを思い出すと、不思議と安心する事が出来た。




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