君が教えてくれた事



「お前には、借りがあるから、黙っててやるよ・・・。
もうすぐ、みんなも来るから・・・これからは気をつけろよ。
それから、
・・・リカちゃんの事、俺、まだ諦めたわけじゃないから、チャンスがあれば、奪うよ・・・。」



そう言った野上は、何故か穏やかな目をしていた。



いつも俺に向けていた様な、怒りに満ちた目ではなく、リカの事を見る時の様な、優しい目だった。



俺の事を、対等に扱って、リカへの想いを正直に俺にぶつけてきた。



「諦めろ。そんなチャンスは来ねーよ。」




野上の目を見てそう答えた。



何故か嬉しかったんだ。



俺がリカの事を好きでいる事を、許された様な気がした。



堂々と、リカの隣にいたいと思った。



誰にも取られたくなくて、自分だけを愛して欲しくて。



初めて生まれた独占欲。



リカだけは、どうしても手放したくない。





それを俺も野上に伝えたかった。



お前にリカは、渡さない。



リカは俺のものだって。



そんな俺を、野上は軽く笑って更衣室に入って行った。




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