叶えたい花。
 思わずため息を吐いてしまった私に、

「いやか」

「?」

「俺のことは嫌いか?」

 甲斐先輩は、急にそんなことを言い出した。私は

「えっ、なわけな…って、なんでそんなことを?」

 と、聞いてみた。

「別に」

 と、甲斐先輩ははぐらかすだけだった。私はそれ以上聞かないことにした。でも、

「…、…」

 甲斐先輩は何か言いた気にちらちらとこちらを見ていた。

「どうかしましたか?」

「別に。自意識じゃねぇの?」

 そう言われると何も言えなくなってしまう私は、確かに自意識だと思うしかなかった。

「…」

「…」

 気まずい沈黙が私と甲斐先輩を包む。
 いつも通り、甲斐先輩は何を考えているかわからないようなつかめない人だけど、甲斐先輩の掴んでいる手はとても優しくて、小さく感じた。
 すごく、寂しい手だった。まるで、何かを無理やり抑えているような…

「なんだよ?人の顔じろじろみて。惚れたか?」
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