叶えたい花。
 と、周りを見渡した甲斐先輩が、楽しそうな表情をしながら私の耳元で喋る。

「先輩ですから」

 と、私は高鳴る心拍を抑えつつ、平然を装って返した。でも甲斐先輩は、

「んだそれ」

 と、私の気持ちを知っているかのように反抗して、なかなか会話を終わらせてくれないのでした。
 そして、私はついに決心して、

「あの、もうそろそろ離れてください」

 と甲斐先輩に言ってみた。さすがに色んな人の視線がきつい。
 でも甲斐先輩は、そんな私の心配を余所に、

「そうか…、お前やっぱり俺のこと…」

 と、泣き真似を始めるのだった。本気で焦った私は、

「違いますってば!好きですよ!先輩として!」

 と、叫んでしまった。叫んでから我に返った私は、本気でこの世の終わりだと思った。でも、

「わーってるって!お前ってマジでバカだな!」

 と、甲斐先輩は笑って流してくれた。他の人がどうかはわからないが、そんな甲斐先輩の対応が今の私にとってすごく嬉しかった。でも、

「ばかじゃないです」

 否定するところは否定させてもらうけど。
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