叶えたい花。

「あぁ。お前だって人のこと言えねーだろ。話しかけられるまでずっと遠くの方見てんじゃねぇか」

 と、シゲはごもっとものことを返してきた。私は、

「私は、ずっとそうだったからね。もう慣れたよ」

 そう言った。でも、シゲは、私の心を読んだらしく、

「本当に慣れてる奴はなぁ、そんな寂しそうな顔しねぇんだよ。わかったか」

 と、言ってきたのだった。私はというと、

「シゲに言われたくないよ」

 と、また泣きそうになっていた。この泣き虫、ほんとどうにかしたい。
 シゲは、ため息を吐いてからとうとう立ち上がった。そして、追い出されると思って身構えた私の所に来て、シゲは私を抱きしめた。
 シゲは、こう言った。

「そんなこと言われたってなぁ…。俺は別に寂しくも悲しくもねぇよ。だって、お前が一年間もこうして俺と話してきたじゃねぇか。お前が、そうやって俺と関わってる限り俺は寂しくも悲しくもねぇよ。だから、余計な心配すんな。な?」

 シゲの優しさが、ここまで伝わったのは初めてだった。
 そんなシゲの優しさに、私は

「ごめんね、ありがと」

 と、泣きながら言うことしか出来なかった。
 シゲはというと、ただただ、黙って私を抱きしめて、頭を撫でてくれていた。
 それが彼なりの優しさなんだと改めて実感するのだった。
 私が気が済むまで、泣いた。でもシゲは、泣きやむまでずっと抱きしめてくれていた。
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