叶えたい花。
 しばらく学校の生い茂った裏庭を歩くと、見たことがあるような無いような場所に着いた。

「ここ…大学よね?」

 私がそう言うと、

「そうだけど?」

 と、シゲは当たり前のように答えた。

「なんでこんな所に…」

 と、私が聞くと、

「捕まりづらいから」

 シゲはいつも通り素直だった。そんなシゲに私は、

「あの人、よかったの?」

 と、遠慮も無しに聞いた。シゲはというと、

「いいんだよ。別に家に帰れば会えるし」

 表情も変えずにそう言ったのだった。それでも気になる私は、

「そう?」

 と、もう一度聞いてみた。すると、シゲはこう言った。

「心配すんなって。なんかあったらちゃんと言うからよ」

「えっ!」

 と、私が心配して声を上げると、

「冗談だって!」
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