叶えたい花。

「好きな人の名前を教えるまで諦めないと」

「で?」

「迷惑かけたくないので無理だと言いましたら、では死ぬと」

「で?」

「死なれるのも言い合いになるのも困りましたので、あなたの知らない人だと言いましたら、今はそれでもいいけど諦めないと」

「で?」

「また追っかけが出来てしまいました」

 私は、少し黙ってからこう言った。

「…。また?」

 りょーくんは申し訳なさそうにこう返してきた。

「すいません」

「…、帰っていい?」

 私がそう言うと、

「そこをなんとか」

 と、りょーくんは頼んできた。
 りょーくんの顔は悪くない。むしろ良い方。だからこんな巻き沿いを喰らうのも多々ないわけではない。

「…、何も言えないわ…。早く彼女作っちゃいなさいよ、人のこと言えないけど」

 だから、こんな会話も日常って言ったら日常なのかもって考えていると、

「はい…」

 りょーくんは、またため息混じりに返事した。
 毎度思うけど、こんなりょーくんを、正直見ていられなかった。
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