We know












あいつは、幸望は、一度も泣かなかった。


俺が真実を告げた時も、瑞希の顔を見たときも、瑞希と別れる時も、一度も泣かなかった。


だから、余計に心配になった。


いつか、このことが、幸望の心を壊すんじゃないか…と。


火葬場で、ゆっくり空へ向かう瑞希を、ぼうっと見ているとき。


『~♪』


隣にいる幸望が、小さな声で歌い始めた。


それは、幸望が瑞希のために作った曲、"anjel"だった。


小さかった声はだんだん大きくなり、気づけば火葬場全体に響き渡る声で歌っていた。


その声は、いつもの幸望の声じゃなかった。


誰かを幸せにする歌声が幸望の声の特徴。


でも、そのときの声は……









 
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