We know
*
あいつは、幸望は、一度も泣かなかった。
俺が真実を告げた時も、瑞希の顔を見たときも、瑞希と別れる時も、一度も泣かなかった。
だから、余計に心配になった。
いつか、このことが、幸望の心を壊すんじゃないか…と。
火葬場で、ゆっくり空へ向かう瑞希を、ぼうっと見ているとき。
『~♪』
隣にいる幸望が、小さな声で歌い始めた。
それは、幸望が瑞希のために作った曲、"anjel"だった。
小さかった声はだんだん大きくなり、気づけば火葬場全体に響き渡る声で歌っていた。
その声は、いつもの幸望の声じゃなかった。
誰かを幸せにする歌声が幸望の声の特徴。
でも、そのときの声は……