We know
*
あの日…瑞希に屋上に連れていかれた日。
屋上へと続く白い階段をのぼっていた時から、あいつの声は聞こえていた。
透き通るような、人の心をつかんで離さないその声。
俺は、一瞬にしてあいつの声につかまれた。
瑞希がそっとドアを開けると、空に向かって歌う、あいつの姿があった。
笑顔で、誰かに語り掛けるように歌うあいつは本当に楽しそうで。
でも、時々悲しそうな表情をするあいつ。
なぜ、屋上で歌っているのか。
なぜ、悲しい表情をするのか。
気づけばあいつのことで頭がいっぱいで。