空のギター

久し振りの空気

 風巳はというと、彼も友達が出来て楽しい生活を送っているようだ。新しい学校にはれっきとしたダンス部があるので、風巳は迷わず入部した。今はまさに部活中である。

 いつもは部活用に与えられた小さなレッスン室に集合なのだが、今日はとても天気が良く、太陽が“外においで”とメンバー達を呼んでいた。「こんな日に外に出ないなんて勿体ない!」と主張した部長の一言が引き金となり、全員が校庭に飛び出したのだった。

 風巳達が外に出るとすぐ、何処から見ていたのか、女子達が叫び声を上げながらわんさかやってきた。迷惑そうにしたのは神経質そうな副部長の3年生女子。部員達が慌てて「先輩落ち着いて下さい!」、「風巳君はアイドルなんですよ!?騒がれて当たり前じゃないですか!」となだめにかかる。



「それは分かってるのよ。だけど気が散って、みんな練習に集中出来ないでしょ?度を超した叫び声は本番だけにしてもらえると有難いんだけど……」



 いっこうに止まない女子達の悲鳴に、風巳も他の部員達も思わず耳を塞ぐ。部長が、自らの提案は間違いだったと謝罪しようとした時。騒ぎの元となっている風巳が、スッと一歩前に進み出た。
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