空のギター

　まだまだ粗削りな部員も居るが、それが反って生き生きとした、パワー溢れるステージを作り上げている。プロのように洗練されたスキルはないものの、一人一人の一生懸命さが伝わってくる。風巳は内心、そう感じていた。

　Quintetに居る時は常に完璧を求められるが、ここでは楽しむことがより重要となってくる。勿論それは、プロにもアマチュアにも欠けてはならないこと。“今という一瞬を楽しむ”ことは、どちらにも共通するのだ。

　プロとアマチュアの最大の違い。それは、“自分達に向けられる視線の数”と“責任の大きさ”だろう。



「──フィニーッシュ!!みんなお疲れさん!!」



　部長が叫べば、パフォーマンスを終えて満足な疲労を感じている彼らに温かい拍手が贈られる。部員達は口々に「ありがとう！」、「文化祭も期待しててね！」などと叫び、ひらり、校内へと舞い戻って行った。

　生活指導員の「こらー！廊下は走るなぁーっ!!」という声が、彼らに刺さる。「ごめんなさーい!!」と返しながらその勢いは落とさない。青春とは、止まってはいけないものなのだ。それぞれの教室まで、彼らは全力で走り抜けた。