空のギター
「……頼星、たまには良いこと言うじゃん。ちょっと見直した!」

「たまには?いつもだろ、いつも。」



 気に食わない誉め方をされたので、頼星は軽く握った拳で雪那の額を小突く。「暴力反対ー!」と叫ぶ雪那。だが、その顔には満面の笑みが浮かんでいた。じゃれ合う二人を見て、四人が笑う。そして六人での会話が再開する。これが彼らのパターンだった。



「侑は見た目チャラチャラしてるけど芯の通った奴だし、叶は馬鹿だけど努力家だし。都香は大人しいけど、保護者みたいにしっかりしてるもんな!」

「おっ!リーダーが俺らを誉めました!!」

「何か、かゆーい……」

「えっ、そう?嬉しくない?」



 三者三様の反応をする、叶・侑・都香。耀人は一瞬ムッとした顔を見せたが、「可愛げない部員が居るなぁ!」と言い、クスリと笑った。

 沈む日を背景に、カラス達が飛んでいく。壁の時計を見て、呟く声がした。



「……そろそろ帰ろっか?」



 低めのソプラノは侑だ。時計は午後7時を差そうとしている。夏へ向かって歩いている街は、まだまだ明るい。耀人の「そうだな、帰ろうか」という返答が合図になる。六人は揃って部室を後にした。
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