空のギター
 ──四人と別れ、雪那と頼星は。家までの道のりを並んで歩く。スニーカーが地面を擦る音が二つ、夕暮れ時の街に響く。この習慣が染み付いて、一体何年になるのだろう。雪那はふと、そんなことを思った。



「頼星、ありがとう。」

「……何が?」

「さっき、私のことフォローしてくれたから。」



 頼星をまっすぐに見て笑う雪那。現代人には他人と話す時に目を合わせない者も多いと言われるが、彼女はそれとは程遠かった。

 頼星は、「俺は思ったことを言っただけ」とそっぽを向く。可愛くないと思われるその態度が照れ隠しなのだということを、雪那はちゃんと分かっていた。



「……そっか。でも、ありがと!」



 雪那がもう一度言う。その笑顔は、暮れかかる夕日に照らされてオレンジ色に染まっている。



「……おう。」



 頼星は少しだけ、顔を雪那へ向けて答えた。眩しさからか、切れ長のその目をキュッと細めながら。



「じゃあ、また明日ね!」

「おう、明日な。」



 雪那の家の近くでいつもの言葉が交わされる。手を振り合えば、頼星が大きく一歩を踏み出した。

 藍色に傾く空の下。二人は、それぞれの家路に着いた。
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