空のギター
「頼星もあるんでしょ?自信。まぁ、自信がなきゃオーディション受けてないよね。」

「だろうな。で、ヒントは?」



 急かす頼星を見て、雪那は少々考え込む。そして顔を上げた時、微かに笑った。“当ててみろ”という不敵な表情で。



「えーっと……東京に実際にある場所の名前らしいよ?あと、福岡県のどっかの駅名にもなってるみたいだね。」

「ふーん……」



 頼星は目線を少しだけ逸らし、考えを巡らせる。やがて切れ長の目を大きく見開き、閃きを露にした。



「……分かった?」

「おう。多分合ってる。」



 頼星はそう言うと、自らの耳に手を添えている雪那に向かって、ある曲名を口にした。



「……当たり!頼星凄いね!!」

「当然だな。幼馴染みを甘く見んなよ?」

「それ私の台詞!勝手にパクるなっ!!」



 目が合った二人は、どちらからともなく笑い出した。くだらないことで言い争っていても、いつの間にか仲直りしているような関係だ。もしかしたら、相手の言わんとしていることも当ててしまえるのかもしれない。

 それから二人は、足並みを揃えて歩き出した。背中には、それぞれの“相棒”が担がれていた。
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