空のギター

　一人では何となく侘しい食卓も、二人になれば不思議と明るくなる。食事というのは基本的に打ち解けた仲間同士で行うものだから、そう感じるのかもしれない。目の前に並ぶ朝食に、雪那と頼星は静かに両手を合わせた。



「いただきます。」



　優しい時がゆっくりと流れ、ギラギラした夏の朝の日差しが、半透明のガラスを突き抜けて二人を照らす。マンション近くの木の幹では早くも蝉が合唱をしているらしく、ガチャガチャと忙しい鳴き声がしていた。

　頼星は無表情になり、黙々と食べ物を口に運んでいる。暑いからなのか眠いからなのかは定かではないが、いつもの不機嫌さが少しだけ和らいでいるようにも見える。きっと、この空間が心地良いのだろう。



「光夜も風巳も紘も、良い奴だから大丈夫だよ。もし帰れることになったら、頼星には“俺”の分まで頑張ってもらわなきゃいけないしね。」

「……俺はお前を心配してんだよ。」

「あ、そうなの？それは気付かなかった。」



　フッと笑った雪那の声と一人称が変わる。“これから仕事だぞ”、と頼星に伝えているのだろうか。頼星は「まぁとりあえず、帰れると良いな」と呟き、野菜ジュースを喉に流し込んだ。