空のギター
 簡単に洗い物を終え、二人は鞄を片手に揃って玄関を出た。照り付ける太陽光線が、ジリジリと肌に刺さる。少し歩いただけでも汗が滲む程だ。

 二人が住むマンションは、S.S.Gへ行くのに歩いて約10分程かかる場所にある。近場なので、二人にとっては好都合だった。



「光夜は高校卒業したら車の免許取るって言ってたよね。今は電車でS.S.Gまで通ってるんだっけ?」

「みたいだな。紘と風巳も電車だって言ってたぞ。」

「ファンに囲まれたら大変じゃないかなぁ……ちょっと心配だよね。」




 不安げに顔を歪める雪那に頼星は、「まぁ、大丈夫なんじゃねぇの?三人共上手くかわすだろ」と、何とも楽観的な返事をした。自分達は曲がりなりにもアイドルなのだから、心配していたらきりがないと思ったのだろう。どうやら先日から腹をくくったようだ。

 彼の返答を聞き、雪那は「そうだね」と安心したように呟いた。自分達も仕事の行き来や地元に居る時、ファンにはフレンドリーに上手く対応してきた。だから、三人も大丈夫だろう。そう思うと、不安が一つ消えた。

 ──雪那の最大の心配事が解決するかどうかは、これから決まるのだ。
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