空のギター
「ほら、荷物まとめてすぐに行きなさい!お姉さん達、あんたが来るの待ってるわよ!!」



 いつも厳しい硝子だが、彼女なりの優しさが滲み出ている言葉だ。“ご両親”ではなく“お姉さん達”と言ってくれたことも嬉しい。雪那は観念したように頷く。そして、硝子に向かってニッコリ笑った。



「……はい!硝子さん、ありがとうございます!!」

「私はただのマネージャーよ。お礼なら、日頃応援してくれてるファンにきっちり返しなさいね!」



 クスリと笑む硝子。仕事命な性格の彼女らしい台詞に、雪那は微笑み返して「はい!」と答えた。軽く一礼し、雪那は一旦家へと帰る。用意してあった荷物を取りに行って再び事務所に戻ってきた頃には、今日のレッスンに雪那が不在だということがメンバー達に伝わっていた。

 光夜・風巳・紘もそれぞれ夏休みを迎えているようだが、雪那達と同じように、まだ何処にも遊びに行けていないらしい。ちなみに、8月にあるイベントが終われば一週間の休みがもらえることになっている。

 四人と硝子がS.S.Gの前まで見送りをしてくれると言うので、雪那は必要最低限の物をまとめた荷物を抱え、「ありがとう!」とお礼を言った。
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