空のギター
「──忘れ物ないか?」

「うん。なるべく早く戻るね!」



 母親のようなことを言う頼星に、雪那はクスリと笑って答える。雪那と同じことを思っていたらしい紘に「頼星、雪那のお母さんじゃないんだから!」と言われ、頼星は「うるせぇ」とぶっきらぼうに返した。

 風巳がそんなやり取りを見ながら、「どうせなら日帰りにしろよ!」と笑う。雪那が「無茶言うなって!!」と慌てて反論すると、彼は「冗談だよ。ゆっくりしてこい!」と言い、雪那の肩をポンッと叩く。雪那は微笑し、「ありがとう」と呟いた。



「雪那、親御さんによろしくな。それとお姉さんにも。」

「うん、みんなに伝えとく。光夜も三人のこと頼んだよ!」



 雪那が笑い混じりに言えば、頼星と風巳と紘が「余計なお世話!!」と揃って答える。あまりに息がぴったりだったので、傍らで見ていた硝子は「あんた達流石ねぇ!」と吹き出してしまった。

 三人を頼む、と言った雪那だが、最年長ということで、いつも責任を感じているであろう光夜の肩の荷を増やしてしまったのではないかと気付く。あっ、という表情をした雪那に感付き、紘がニコリと笑う。“大丈夫だよ”と、そう伝えるかのように。
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