空のギター
 紘は「たまには俺達が居ない生活を楽しんできてね!」と告げる。その言葉と笑顔に安心したのか、雪那は大きく頷いた。



「紘、ありがとう!また徹夜でゲームしちゃダメだよ?」

「イェッサー!気を付けます!!」



 雪那と紘は笑顔で顔を見合わせる。あどけなさを残した二人のやり取りに、光夜達は小さく笑った。



「……雪那、そろそろ出発の時間じゃないの?間に合わなくなるわよ!」



 硝子が腕時計を見ながら言うと、雪那は携帯を確認して「あっ」と呟いた。「じゃあ行ってくるね!」という雪那の言葉に、みんな頷く。



「向こう着いたら連絡しろよ。」



 頼星が頭をくしゃりと撫でると、雪那はくすぐったそうに笑う。荷物を持ち直した雪那に、硝子がそっと声をかけた。



「雪那、気を付けてね。あんた、お……」



 言いかけて、硝子はハッと口をつぐんだ。不思議そうな顔をした雪那に「とっ、とにかく気を付けて行ってらっしゃい!」と言い、慌ててにこやかに手を振る。雪那は「はーい!行ってきまーす!!」と返し、その場を後にする。頼星は首を傾げていたが、間もなく仲間達と共にレッスン室へ向かった。
< 153 / 368 >

この作品をシェア

pagetop