空のギター

　──遠ざかる後ろ姿を五人が見送った数時間後。雪那は故郷に到着し、父・母・沙雪の友人達と共に、お墓参りへ向かった。姉の友達と会うのは本当に久し振りだ。彼女達は雪那を見るなり、口々に嬉しそうな声を上げる。



「雪那ちゃん、暫く見ない間に大きくなったね！」

「そうですか？」

「沙雪と路上やってた時はもっと小さかったよ！ウチらも年取ったねぇ……」

「うんうん！しかも益々可愛くなった!!」



　姉の友達に言われ、雪那は俯いて微笑う。恥ずかしそうなその表情は、二年前よりも少しだけ大人びていた。

　沙雪の墓前に来ると、一同はしゃがんで手を合わせた。穏やかな風が、それぞれの髪を撫でていく。



「沙雪、今年もみんな来てくれたよ。良かったね……」



　雪那の母が語りかけるように言う。まるで沙雪が本当にそこに居るかのように、優しくて慈愛に満ちた表情だ。



「沙雪、雪那も中３になったぞ。高校受験、見守ってやってくれよ。」



　雪那の父も、ひんやりとした鼠色を撫でながら言う。彼の表情もやはり優しく、頭を撫でられて顔を綻ばせる沙雪の姿が浮かぶようだった。