空のギター

　snow crystalsとは“雪の結晶”という意味。12月23日生まれの雪那と２月24日生まれの沙雪が組むには、まさにぴったりのグループ名だ。蒼い蒼い夏空の下。溶けることのない二つの雪が、自分達の存在を目一杯に主張する。





あぁ、降り注ぐこの雨よ
このまま僕を隠しておくれ
そうすりゃきっと
気付かれないさ、何処の誰にも
だから、そのまま

あぁ、絶え間ないこの雨よ
このまま僕を泣かせておくれ
そうすりゃ、きっと
気付かれないさ
溢れる涙、今もなお





　雨空に向かって咆哮する男性が目に浮かぶようなこの歌詞は、沙雪が自分の失恋を元に作り、それに雪那が曲を付けたのだった。地面に激しく叩きつける雨のようにギターが喚き、ピアノがやや控えめに悲しみを歌う。そんなメロディーに二人の声が重なれば、涙を流さない者の方が少ないだろう。

　歌詞を歌い終えた雪那がふとベビーカーに視線をやれば、目を覚ました赤ちゃんがキョトンとした顔で自分を見つめていた。小さく笑いかける。小さな女の子は何とも幸せそうに、ふわりとした天使の笑みを返してくれた。雪那がコンポの停止ボタンを押せば、感激の拍手が彼女と沙雪を包んだ。