空のギター
「──あれから一年経って、この子も1歳になったわ。お義母さんは今でも一緒にお買い物に行ってくれたり、遥(はるか)の面倒を見てくれたりしてね……あの時死ななくて、本当に良かった。」



 涙ぐみながら、向日葵のような笑みをこぼす瞳。そんな彼女の話を聞いて、アキバ系の青年とカップルの女性の方がもらい泣きしていた。みんなが口々に良い話だと言うものだから、瞳は頷いて、「遥介には大切なことを教えてもらったわ」と笑んだ。



「みんな、この先何があっても、絶対生きることをやめちゃダメよ。私には病気で亡くなった夫も居れば、イジメを苦に自殺した友達だって居る。人それぞれなのよね、いつ“終わる”のかは。それが来るまで待つのか、自分で終わらせるのかは、その人の自由だと思う。」



 瞳は一度言葉を切り、みんなの顔を順に見回してから話を続ける。



「でも……自分で終わらせて、本当に後悔しないのかしら?“自分は人生を全うした”って、胸張って言えるのかしら?それが出来ない内は生きなきゃいけないと思うのよね、私!」



 その場に居た誰もがうんうんと頷いていた、彼女の台詞。瞳は小さく笑い、自分の意見を締めくくる。
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