空のギター
はじまりの場所
あの頃の場所は、昔と何も変わっていなかった。人波が全く絶えない。変わったことといえば、今雪那の隣に沙雪が居ないということくらいである。雪那はギターをケースから取り出し、歌い始める。自分を暗闇の中から救ってくれた、あの歌を。
──運命なんて信じちゃいなかった。幸福(しあわせ)が万人の上に降り注ぐなんて思っていなかった。だから、見えない明日を手探りで、ひとりぼっちで進むのが怖かった。自分より悲しい人を見ると、少し安心した。
悔いのないように生きたい。最期は笑って死にたいと思っていた。だが、沙雪が居なくなったあの日から笑顔を忘れ、いつ命が尽きようとも構わなくなった。そんな時、頼星が教えてくれたこの歌に気付かされた。
泣きながらでも懸命に生きている人が居る。人はもっと優しくなれる。運命はこえられる。この歌は、沢山のことを雪那に教えてくれた。
「ねぇ、あれってQuintetのSetsunaじゃない?」
「嘘っ?声が全然違うじゃん。顔は少し似てるけど……」
周りから聞こえる声には全く耳を貸さない。みんなにも知って欲しい。自分はこの歌に救われたんだ。仕事の時とは違う高めのアルトで、雪那はそう伝える。
──運命なんて信じちゃいなかった。幸福(しあわせ)が万人の上に降り注ぐなんて思っていなかった。だから、見えない明日を手探りで、ひとりぼっちで進むのが怖かった。自分より悲しい人を見ると、少し安心した。
悔いのないように生きたい。最期は笑って死にたいと思っていた。だが、沙雪が居なくなったあの日から笑顔を忘れ、いつ命が尽きようとも構わなくなった。そんな時、頼星が教えてくれたこの歌に気付かされた。
泣きながらでも懸命に生きている人が居る。人はもっと優しくなれる。運命はこえられる。この歌は、沢山のことを雪那に教えてくれた。
「ねぇ、あれってQuintetのSetsunaじゃない?」
「嘘っ?声が全然違うじゃん。顔は少し似てるけど……」
周りから聞こえる声には全く耳を貸さない。みんなにも知って欲しい。自分はこの歌に救われたんだ。仕事の時とは違う高めのアルトで、雪那はそう伝える。