空のギター
 ──翌日。雪那が帰るとすぐ、Quintetと硝子は社長に呼び出された。五人はともかく、硝子でさえその理由が分からないらしく、「私、何かしたのかしら……」と珍しくオタオタしている。が、すぐにいつものキリッとした表情になり、先頭を切って歩き出した。その後に五人が続く。

 やがて六人は、ただならぬ威圧感を放つ一室の前までやってきた。言わずもがな、社長の部屋だ。硝子が二回ノックをすると、「……入ってくれ」という野太い声が、ドアを突き抜けて彼らの鼓膜を揺すった。



「失礼します……社長、一体何のご用です?」



 少々の焦りを抱えたままらしい硝子が、椅子に腰かけた後ろ姿に恐る恐る尋ねる。すると、その背中がくるりと椅子ごと回転した。六人の目には、貫禄のある男性の姿が映る。

 ──S.S.Gの最高責任者・高藤和仁(たかとう かずひと)だ。



「まぁ、君達も座ってくれ。立ったままでは疲れるだろう。」



 高藤は六人の側にあるソファーを指差し、座るように勧める。凛としたその声を久し振りに聞いたQuintetは益々緊張感を募らせたらしく、肩を強張らせる。だが、高藤の言葉に従った硝子に続き、黙って腰を下ろした。
< 185 / 368 >

この作品をシェア

pagetop