空のギター
 高藤は硝子をチラリと見てから、Quintetと順に目を合わせていく。彼と視線が交わるだけで、上から鉛で押さえ付けられたような感覚に陥る。いっときの静寂の後。遂に高藤が口を開いた。



「……唐突に聞こうか。君達、何か私に隠していることはないか?」

「え……?」



 光夜・風巳・紘は首を傾げている。彼らには隠していることなどないのだから、愚問同然だろう。雪那と頼星はチラリと互いの顔を見合わせた。その背中を、妙に冷たい嫌な汗が伝う。もしや気付かれているのか……雪那の頭に“解雇”の二文字が赤く点滅し、同時に姉の笑顔が浮かんだ。



「……雪那。」



 突然の太い声に、雪那の体がビクッと硬直する。自分を名指しまでしてきたのだから、やはりバレているのか。不安が何度も押し寄せてくる。



「……正直に言いなさい。誰も怒らないから。」



 高藤は椅子から立ち上がり、雪那の前にしゃがむと、その頭を優しく撫でる。光夜・風巳・紘は何のことか分からないので目が点になっており、硝子は黙って事の成り行きを見守っていた。一方、雪那の秘密を知っている頼星は複雑な表情をしている。“最悪の事態”が頭をよぎったのだ。
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