空のギター
オーディション前の出来事が、頼星の脳裏に浮かぶ。雪那はあの時も、決して自分の意志を曲げなかった。強い思いが、いつでもその胸にあったのだろう。暫く黙ったままだったが、頼星は小さく息をついた。雪那の言葉に軽く頷くその仕草は、あの時と同じ彼の温かさを彷彿とさせた。
「……分かった。お前がそこまで覚悟してんなら、俺も腹くくるから。」
頼星は高藤の方へ向き直る。“腹をくくる”とは何のことだ。そう思ったのは高藤や雪那だけではないだろう。これから彼が言わんとしていることとは、一体……
紘は涙目になってその場の重苦しい雰囲気に耐えており、風巳は唇を噛み締めて俯いている。光夜は両手を固く握り締め、硝子は普段の彼女からは想像し難い程にソワソワと落ち着かない。そして雪那は、見開いた目を頼星に向けたまま、彼の言葉を待っている。
雨雲が漂っているかのような空気に満ちた室内で、果てしなく長く感じる時間が過ぎた。誰も物を言わない状態が続く。心地悪い沈黙に紘が叫んでしまいそうになった時。片手でそれを制した頼星が、高藤の目をまっすぐ見つめて言う。
「……雪那が辞めることになったら、俺も辞めます。」
「……分かった。お前がそこまで覚悟してんなら、俺も腹くくるから。」
頼星は高藤の方へ向き直る。“腹をくくる”とは何のことだ。そう思ったのは高藤や雪那だけではないだろう。これから彼が言わんとしていることとは、一体……
紘は涙目になってその場の重苦しい雰囲気に耐えており、風巳は唇を噛み締めて俯いている。光夜は両手を固く握り締め、硝子は普段の彼女からは想像し難い程にソワソワと落ち着かない。そして雪那は、見開いた目を頼星に向けたまま、彼の言葉を待っている。
雨雲が漂っているかのような空気に満ちた室内で、果てしなく長く感じる時間が過ぎた。誰も物を言わない状態が続く。心地悪い沈黙に紘が叫んでしまいそうになった時。片手でそれを制した頼星が、高藤の目をまっすぐ見つめて言う。
「……雪那が辞めることになったら、俺も辞めます。」