空のギター
 張りつめた空気が充満している四角い空間で、七人の人間が顔を合わせている。真実が伝えられるのを、全員が固唾を呑んで待っているのだ。やがて雪那が、歌うようにスッと息を吸う。流れゆく川のような“彼女”の声が初めて、その部屋に響いた。



「みんなにずっと黙ってたけど……実は女なんです。この世界に入るために、色んな人を騙したり共犯者にしたりしてきました。両親がS.S.Gをよく知らないことを利用したし、反対してくれた頼星も巻き込んだ。本当は、自分がここに居ちゃいけない人間なんだってことも分かってます。
ファンを裏切ったことは、芸能人として一番大きな罪だと思う。でも、姉の遺言だったから。約束したんです、“チャンスは絶対逃さない”って。それを破ることは絶対したくなかった。
……辞める覚悟は出来てます。色々とすみませんでした。短い間だったけど、みんなと一緒に歌えて、踊れて楽しかった。硝子さんと社長にも、本当にお世話になりました。」



 深々と頭を下げたその肩が、小さく震えている。メンバー達は今にも泣きそうで、ただただ雪那を見つめることしか出来ない。か細い声が、「……ありがとうございました」と別れを告げた。
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