空のギター
「……本当だな?君は自分がどれだけのことをしたのか、本当に分かっているんだな?」



 高藤が真剣な面持ちで雪那を見つめる。先程優しく頭を撫でてくれた時とは違い、彼は今厳しげな雰囲気を纏っていた。雪那は小さく「はい」と答える。もうこの世界には居られない。きらびやかな舞台の幕が閉じられるのだ。雪那はギュッと目を瞑った。



「……だそうだよ、山内君。」

「ええ。やっぱり私が思った通りでしたね。」

「あぁ。流石我が社の敏腕社員だな!」



 高藤がハッハッハッと高らかに笑えば、硝子もフフフと笑みをこぼす。二人のやり取りを聞いた五人は、呆然としてお互いの顔を見合わせている。

 ──何なんだ一体。雪那が呟いてしまいたくなった時、硝子が言葉を発した。



「ごめんね雪那。実は私と社長、気付いてたのよ!」

「いやぁ山内君が、『社長、あの子絶対女の子です。仕草が明らかに他の四人と違います!』と言うもんだからね。私もよく観察しないと分からなかったよ。雪那、お前役者でもいけるなぁ?」



 硝子が悪戯っぽく笑めば、高藤は再び豪快に笑い、社長椅子に座り直した。気が抜けた顔の雪那と頼星が、目を合わせる。
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