空のギター
「……おい、いい加減泣き止めよ。」



 頼星が服の袖で雪那の涙を拭きながら言うと、紘が「そうだよー!脇腹くすぐっちゃうよ?」と笑う。メンバー達は紘の台詞に爆笑しているが、雪那にとっては勘弁願いたいことだ。

 雪那は「ごめん」と言いながら、四人と顔を見合わせて笑った。いつかはファンに自分のことを打ち明けようという思いを、胸に秘めて。



「いつかファンに告白するかどうかは雪那に任せるとして、“彼”にはこれからもQuintetとして活動してもらうからな。みんな、よろしく頼むぞ。」



 雪那の気持ちを見透かしたような高藤の台詞。頼星達四人と硝子は、力強く「はい!!」と答えた。数ヶ月共に過ごしてきた四つの視線が、雪那を捉える。



「雪那、女の子だったんだなぁ?ま、これからもよろしくな!ツインボーカル頑張ろうぜ!!」

「びっくりしたけど、何か納得した!体力なかったしね……レッスン、あんまり無理しちゃダメだよ?」

「男でも女でも、雪那は雪那だもんな。これからも五人で頑張ろうぜ!」



 風巳・紘・光夜が順に再スタートの言葉を贈る。雪那は頷いて、その言葉を受け止めた。
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