空のギター
「風巳、紘、光夜……ありがとう!」



 雪那は涙を拭いながら言って、側に居る頼星に視線を移した。途端に溜め息をつく彼。ムッとする雪那を見て、光夜と紘と風巳がクスリと笑った。

 この掛け合いがなくなれば、とても寂しくなる。それに便乗する声や止める声もなければ、Quintetではない。“五人一緒”はとても大切なことなのだと、改めて実感する。



「……ったく、本当に世話が焼ける奴だな。」



 皮肉たっぷりに言った頼星だが、その顔は雪那が芸能界に残る嬉しさからか、笑顔だ。「頼星、ありがとう!」と照れたように笑う雪那に、彼は「とりあえず、良かったな」と言って、その頭を撫でてやった。

 頼星以外の人達が、聞き慣れなかった声に漸く慣れてきた頃。雪那が思い出したように口を開いた。



「そういえば……もう一つだけ、頼星にも言ってなかったことがあるんだよね。」

「……まだあんのかよ。」



 眉間に皺を寄せる頼星。そろそろキレるぞと言いたいのだろうか。雪那はやんわりと彼をなだめ、聞く人を魅了するあの声でそっと呟く。



「“『unrequited love;』のプロモの女の子さ……あれ、俺だから。”」
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