空のギター

いつもの帰り道

　時は20XX年11月某日、場所は神奈川県某所。中学生の男女二人が、夕方の街を下校している。少女の名は神代雪那(かみしろ　せつな)。少年の名は古木頼星(ふるき　らいせい)だ。



「ねぇ、頼星。」

「……何だよ。」

「聞いて驚かないでよ？私ね、S.S.G.のオーディションに応募したんだ！」

「S.S.G.って……あの？お前凄ぇじゃん！」



　彼女達が言っている“S.S.G.”とは“Star Sign Group”の略だ。現代では誰もが知っている芸能プロダクションの１つで、音楽・芸術・演技などの幅広い分野で活躍するアーティスト達が所属している事務所である。



「まだ書類審査受かっただけなんだけど……ごめん！」



　雪那が突然両手を合わせた。急に謝られて訳が分からない頼星は、「はぁ？」と顔をしかめて疑問の声を洩らす。それを見た雪那は「分かる訳ないか……」と呟いた。



「その……頼星の分も、勝手に応募しちゃって！」



　雪那からニコリとした笑顔を向けられた頼星の顔に表れたのは、驚きだった。頼星はこう思ったに違いない。“こいつ、いつの間に……”と。