空のギター
 みんなの変化には周りから反応があったが、自分にはまだない。努力が足りないのか……雪那は小さく溜め息をついた。雪那のその様子に気付いた頼星が、「焦んなよ。まだ新曲が発売されてから日が経ってないだろ?」と言い、優しく頭を撫でてくれる。「うん……」と返した雪那だったが、やはり心の中は不安でいっぱいだった。

 練習を終えたのに、いつまでも帰らない五人。“そろそろ帰ろう”と光夜が口にしようとした時、レッスン室のドアがバタンと音を立てた。



「あんた達!全員予定がない日をすぐ教えなさい!」



 突然部屋に飛び入ってきた硝子に驚いた五人だが、携帯やらスケジュール帳やらを取り出して、各自予定が空いている日を伝えた。数分の話し合いである一日を決定させた硝子が、五人にやっと事の詳細を告げる。彼らは全員、“信じられない”という表情を見せた。



「え……あのトリスタが、わざわざ謝りたいって?」

「ていうか、あの人達何も悪くないよな……」



 口々に呟く五人に「二人は『ファンの行動は元を辿れば自分達に繋がるから』って言ってたそうよ」と硝子。彼らのキャリアの長さを感じさせる台詞だった。
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