空のギター
 人々の心の時間を止める方法を、五人はきっと無意識の内に知っている。歌とダンス、時には演奏という魔法で、相手を一瞬で魅了するのだ。

 知らないままの方が魅力的だったというアーティストも中には居るが、Quintetの場合は違う。知れば知る程面白い。CDの蓋を開ける度に、テレビに映る度に新しい表情を見せてくれるのだ。“いつも観客をドキドキさせていたい”。Quintetと彼らを支えるプロデューサー達が同じ気持ちだから、こんなステージが成り立ったのかもしれない。



「今日は二種類のQuintetが見れてお得だったねー!」

「うんうん!五人共ほんとかっこいい!!」

「みんな変わったよねぇ……早くコンサートやってくれないかなぁ!」



 会場の奥で五人を見ていたファンの呟きを耳にし、硝子はクスリと笑んだ。Quintetの成長をファンも認めてくれている。五人が知ったらとても喜ぶだろう。

 ステージに目をやれば、歌い終えて清々しい笑顔を浮かべ、観客に向かって手を振る五人。拍手の雨は未だ降り止まない。本日のトリを飾った彼らを、司会の女性が再びゲスト席へと呼ぶ。汗を拭いながら現れた五人に、大勢のファンから歓声と「お疲れ様!」の声がかかった。
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