空のギター
長年の関わりは、思考回路を似たものにさせたらしい。ナイロン袋以外の荷物を部屋に置いて玄関の鍵をかけてから、雪那は隣の部屋のドアを、拳で大きく二回叩いた。
数十秒後、ガチャリと音を立てて扉が開く。「入れば?」と自分を招き入れる低い声に頷いて「お邪魔します」と答え、雪那は頼星の部屋に上がった。
「おーっ、相変わらず綺麗に片付いてるね。」
「お前は人が来た時に慌てて片付けるタチだもんな。普段からちゃんとしとけよ。」
頼星の一言に「うっ」と言葉を詰まらせた雪那だったが、彼の「読んでみるか?」という呟きに首を縦に振る。二人はそれぞれ、指先に触れた一枚の封筒を手に取り、開封して読み始めた。
──呼吸の音すら静寂に溶けた室内に、時間を忘れた雪那と頼星が居る。一つ、また一つと読んでいたらやめられなくなり、最後の一通を丁寧に封筒の山に重ねた時、窓の外では月が穏やかに笑っていた。
「……お前、めちゃくちゃ集中してたけど?」
クスリ、という微笑が鼓膜を震わせる。声の主(ぬし)は先にファンレターを読み終えていたらしく、一心不乱に文字を追っていた雪那をいたわるように、そっと髪を撫でてくれた。
数十秒後、ガチャリと音を立てて扉が開く。「入れば?」と自分を招き入れる低い声に頷いて「お邪魔します」と答え、雪那は頼星の部屋に上がった。
「おーっ、相変わらず綺麗に片付いてるね。」
「お前は人が来た時に慌てて片付けるタチだもんな。普段からちゃんとしとけよ。」
頼星の一言に「うっ」と言葉を詰まらせた雪那だったが、彼の「読んでみるか?」という呟きに首を縦に振る。二人はそれぞれ、指先に触れた一枚の封筒を手に取り、開封して読み始めた。
──呼吸の音すら静寂に溶けた室内に、時間を忘れた雪那と頼星が居る。一つ、また一つと読んでいたらやめられなくなり、最後の一通を丁寧に封筒の山に重ねた時、窓の外では月が穏やかに笑っていた。
「……お前、めちゃくちゃ集中してたけど?」
クスリ、という微笑が鼓膜を震わせる。声の主(ぬし)は先にファンレターを読み終えていたらしく、一心不乱に文字を追っていた雪那をいたわるように、そっと髪を撫でてくれた。