空のギター
「あいつらがさ、『雪那が大丈夫になったらdice復活させよう』って。『そのタイミングは頼星が判断して』って言われてたんだよ。
……お前、もう大丈夫だよな?路上ライブ、また六人で出来るよな?」



 幼い子供を諭す父親のような口調で、そう問われた。雪那はそっと、両の瞼を閉じる。次にそれを開いた時。瞳には、肯定を表す微笑が宿っていた。



「……よし、じゃあ次のオフで決まりだな!」



 珍しく弾んだ声を上げ、頼星は少々乱暴に雪那の頭をポンポンと叩く。「痛い!」と反論を示しながらも、雪那は笑顔を崩さない。それは“もう立ち直れる”と自覚したからなのだろう。



「路上ライブかぁ……そういえば、もうずっと六人で踊ってないよね。そろそろ復活しなきゃ、みんなに悪いか!この前侑から『次の休みいつ?』って電話もあったしね。」

「そーそー。叶なんか『新技習ったから早く試したい!』って騒いでたらしいぞ。都香がメールで言ってた。」



 一昨年までは毎週のように集まって踊っていたのに、神代家に“あの事件”があってから、六人は長期休業していた。そろそろ腰を上げられる。心の中で呟いて、雪那は活動再開の日に思いを馳せた。
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