空のギター
 悩んだ挙句、二人は彼女達に向かって手を振ってやる。三人の少女はキャアキャアと叫び、「やっぱ本物だったね!」と、こちらにも聞こえるくらいの声で喜びを露にした。

 雪那達の行動に気付いた叶が、すかさず「ファンサービス?優しいなぁ!」と笑う。侑に至っては「頼星が愛想良いなんてアンビリーバボー……」などと呟いており、頼星から睨みを食らっていた。



「ファンは大事だもんね、頼星!この前半年分のファンレターもらったけど、“俺”すっごく嬉しかったもん!!」



 突然聞こえた低めのアルトに、頼星が微笑をこぼす。雪那が同級生の前でも声と一人称を変えているのだ。学校では滅多に聞けないその声に、耀人達四人は驚いている。



「やっぱ“そっち”なんだ?」



 頼星がニヤリとして言えば、雪那は「だって、流石にもう顔バレてるからね!」と言い、クスリと返す。初めはぎこちなかった一人称も、今ではすっかり様になっている。

 六人は、美術が得意な侑が作った揃いのTシャツを着ていた。白地に大小様々のサイコロが描かれ、一番大きなものにはグループ名が赤字でプリントされている。ボトムはそれぞれ、動きやすいスカート・ズボン姿である。
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