空のギター
 ──息の合ったキレのあるダンスに、観客は息を呑んだ。チームワークは完璧で、限られたスペースを有効に使っている。光夜達も圧倒されていた。雪那と頼星を見れば、伸び伸びと楽しそうに踊っている。光夜達は時間の差を見せつけられたようで、少しだけ寂しく感じた。“もしかしたら、dice(ここ)が二人の居場所なんじゃないか”、と。



「──光夜、風巳、紘!どうだった!?」

「俺らのダンス、なかなかだったろ?」



 雪那と頼星の声で、三人はハッと我に返った。意識を何処かへやってしまう程ショックだったのかと思うと、尚更悲しい。



「えっと……凄かった、よね!俺らびっくりしちゃった!!」

「……うん、長年一緒にやってきただけあるよ。」

「ダンス部のみんなが見たら羨ましがるだろうなぁ……」



 紘が途切れ途切れに言うと、光夜と風巳もぎこちなく答える。そう言うのがやっとだったのだ。“自分達は本当に二人の仲間になれているのだろうか”。それだけがとても不安になった。世間ではグループとして認められているが、三人と雪那達は出会って一年すら経過していない。どうしても耀人達と比べてしまい、自己嫌悪に陥ってしまうのだ。
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