空のギター
「──ふーっ、楽しかったねー!みんなびっくりしてたから、思わず笑っちゃったよ!!」



 休憩室に来てからの紘の第一声に、一同がニコリとする。夏のイベントがあった時、織春に「またいつか一緒にパフォーマンスしましょうね!」と言われてから、案外早く彼女との約束を果たすことが出来たのだ。五人はとても嬉しそうである。

 風巳が差し入れのクッキーをみんなに配ろうと、箱の蓋を開けたその時だった。ドアが軽やかな音を二回立て、次いで「あんた達、入るわよ!」という硝子の声。何だろうと思いながらも光夜が「はい、どうぞ」と返事をすれば、硝子に続いて一人の男性が中に入ってきた。

 30代半ばだろうか。小綺麗な格好をした、人の良さそうな男性である。五人と目が合うと、彼はニコリと笑って口を開いた。



「Quintetの皆さん、初めまして。私はこういう者です。」



 男性はそう言うと、慣れた手付きで五人に名刺を配る。シンプルなその名刺には、“「Light film」助監督 長谷川慎一”と書かれていた。映画界とは何の関わりもない五人は、ただただ首を傾げている。
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