空のギター
 現実的でいて幻想的な歌詞は、流石は映画の世界を理解している監督の作詞だ、と言えるだろう。プロモーションビデオにも、そのような効果が使われているのだろうか。

 2番の歌詞を飛ばし、演奏の見せ場に突入。カメラマン達は五人それぞれをアップで撮影し、彼らはそれに応えるように笑顔を向けたり、凝ったパフォーマンスを見せたりする。ラストの大サビ部分。盛り上がる演奏と共に、二人のボーカルが背中合わせの熱唱を始めた。





思いが届いた嬉しさに
きっとあの歌 歌いたくなる
この手の中に掴んだ光が
確かに輝く 月夜の空に





 コーダに向かっていく演奏は、急ぐことなく丁寧に進められる。顔を見合わせて笑う五人を切り取るビデオカメラ。時間を忘れて彼らのパフォーマンスに魅入る客達。“箱ライブ”というコンセプトはQuintetの衣装だけに留まらなかったようだ。観客は、ライブハウスに詰め込まれたような比較的近い距離から、五人を見つめていた。

 最後の一音が場内に響き渡る。フェードアウトしていく音楽に、沸き上がる歓声。拍手に包まれながら、五人は声を揃えて叫んだ。



「……ありがとうございましたー!!」
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