空のギター
「それではここで、映画で流れたQuintetの曲、『光』を歌って頂きたいと思います。Quintetの皆さん、お願いします!」



 司会者が言うと、出演者達の後ろにある白い幕がスーッと上がっていく。現れたのは、Quintet愛用の楽器達。どよめく観客に一笑し、恋と夢が詰まったメロディーを奏でた五人。人々は、彼らに感動を伝える拍手を贈った。



「──イベント、めちゃくちゃ盛り上がったねー……」



 事務所の談話室へ着いた時、風巳が疲れた顔でみんなに言った。他の四人も同様にぐったりとしている。一体何故か──それは、彼らの周りに散乱するいくつものラッピングされた包みと、今日がバレンタインデーだということが教えてくれる。



「……出待ちとか聞いてねーよ。」

「何か気疲れしたね……」



 呟いたのは頼星と紘。いつも無邪気な笑顔をファンに向けている紘ですらこの有り様だ。頼星と他の三人は、“俺達はハリウッド俳優でも韓流スターでもねぇ”とばかりに溜め息をこぼしている。



「……まぁでも、チョコもらえたのは嬉しいよね!」



 仲間達を元気付けるように笑顔で言う風巳。彼の笑顔で、四人は多少なりとも復活した。
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